サンタ・マリア・グロリオーサ・デイ・フラーリ教会
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主祭壇を飾るティッツィアーノ最大の傑作といわれる「聖母被昇天」。 6.68m×3.44mのこの作品は、1516年に教会が発注し、1518年に主祭壇に設置されました。作品下部の中央にTICIANVSと本人の署名が入っています。 作品は大きく分けて3つの部分から成っています。 2人の使徒たちと聖母の衣装の赤によって作られた三角形は上へ上へと向かっていき、一方、天から降り注ぐ光は生命、愛、喜びを表しています。 ところで、1817年に「より良い保存状態を保つため」という理由で、この作品はアッカデミア美術館に移されました。主祭壇にはティッツィアーノの作品に代わって、ジュゼッペ・ポルタによる同じ大きさ、同じ「聖母被昇天」というタイトルの作品が飾られていたそうです。 |
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主祭壇のすぐ右にある洗礼者ヨハネ礼拝堂の祭壇。 ヴェネツィア在住のフィレンツェ人たちのための礼拝堂には美しい15世紀の木製の祭壇があり、フィレンツェの彫刻家ドナテッロによる木製の洗礼者ヨハネの像(1438年)が中央を飾っています。 洗礼者ヨハネの力強さを生き生きと表現してるこの像は、ヴェネツィアに現存するドナテッロの唯一の作品です。 |
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1482年のバルトロメオ・ヴィヴァリーニによるベルナルド礼拝堂の祭壇画。 ヤコポ・ダ・ファエンツァによって作られたと思われる美しいルネサンス様式のフレームの中央には玉座の聖母子が描かれています。 聖母子の左側は聖アンドレアとバリの聖ニコラ、右側は聖パオロと聖ペテロで、上段には死せるキリストが描かれています。 |
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ヴェネツィアの名家コルネール家の聖マルコ礼拝堂の祭壇画。 同じくバルトロメオ・ヴィヴァリーニの1474年の作品ですが、こちらはゴシック様式の枠組みのため、上のベルナルド礼拝堂の祭壇画とはまた別の印象です。 中央の天子に囲まれた大理石の玉座の聖マルコは、すでにルネサンスの典型的スタイルが見て取れます。左側は洗礼者ヨハネと聖ジローラモ、右側は聖ペテロと聖ニコラです。 |
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聖具室のジョヴァンニ・ベッリーニによる祭壇画。本人の署名と1488年という製作年が読み取れます。すばらしいフレームは、おそらくベッリーニ本人のデザインを元にヤーコポ・ダ・ファエンツァによって作られたものと思われます。 |
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以上見てきたように、ティッツィアーノの最大の傑作「聖母被昇天」をはじめ、この教会は美術館顔負けなくらい多くのすばらしい傑作にあふれています。美術館は確かに作品の保存状態を保つにはいいかもしれませんが、特に祭壇画などは、その作品が本来置かれていたそのままの場所・採光の下で見るのが一番だと思うので、その意味でもこの教会の存在はとても貴重だと言えるでしょう。 ところで、教会なのにちゃっかりと入場料を取るというところも「美術館顔負け」です。各地の教会では、聖具室や宝物館、クーポラ、回廊など、教会内の一部の場所では入場料を取ることもありますが、教会本堂に入るためにお金を取られた経験はここだけです。さすがは商才にたけたヴェネツィア人、とヘンに感心してしまったのでした。 しかしながら、入場料を払ってまでも見る価値が絶対にある、ということを誤解のないように明記しておきます。 |
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