サン・ザッカリア教会 San Zaccaria


 

ドゥカーレ宮殿の前から旅行者でにぎわうスキアヴォーニ河岸をしばらく行き左手に入ると、ひっそりとした広場に出ます。その広場にあるのがサン・ザッカリア教会です。

教会の起源は、ベネディクト派の修道院と聖ザッカリアに捧げた教会ができた9世紀にまでさかのぼります。その後何度も改修されましたが、15世紀末のマウロ・コドゥッシの改修によって、ヴェネツィアン・ルネッサンス様式の特徴的なファサードを持つ現在の姿になりました。ファサード頂上の中央には聖ザッカリアの像が載っています。

   

教会内部は三廊式です。写真右は主祭壇で、その後ろ側にも窓があるのが見えますが、後陣の周りに放射状に礼拝堂が配置されているのです。

   

教会内部はヴェネツィア派の絵画で埋め尽くされています。「三博士の礼拝」「羊飼いの礼拝」などの聖書のエピソードによるものや、「毎年の復活祭に教会を訪問するドージェ(元首)」などのヴェネツィア共和国の歴史関連の題材が扱われています。

ちなみにこの教会は、かつてはヴェネツィア共和国のドージェたちの墓所となっていたり、ベネディクト派の修道院がその果樹園の一部を共和国に寄付したり、と、共和国とのつながりが深かったため、毎年復活祭の初日にはドージェが感謝の気持ちをこめて教会を訪問していたそうです。

   

左側の第二祭壇にはジョヴェンニ・ベッリーニによる1505年作の名画「玉座の聖母と聖人たち」があります。ベッリーニはヴェネツィア派絵画の創始者ともいえる父ヤコポ、兄ジェンティーレとともに装飾的で華麗な色彩を駆使したヴェネツィア派を代表する画家です。
 

後陣の後ろ側のサン・タラーシオ礼拝堂には、フィレンツェの画家アンドレア・デル・カスターニョとフランチェスコ・ダ・ファエンツァによる「キリストと諸聖人」(1442年)があります。
 

こちらはダレマーニャとヴィヴァリーニによる板絵で、これも傑作。

ただし、ここへは身廊の右側の合唱隊席を通ってからたどりつけるので、ちょっとわかりにくいかも。他には見学者はいませんでした。

   
地下の納骨堂(クリプタ)は、地盤沈下のために水に浸かっています。

   
一年中、朝から晩まで世界各国からの観光客でにぎわっているサン・マルコ広場やそれに続くスキアヴォーニ河岸からほんの一歩裏手にまわるだけで、こんなひっそりとした空間があり、しかもヴェネツィア派を代表するベッリーニ他の名画に埋め尽くされた非常に由緒ある教会が建っているとはとても意外でした。往時のヴェネツィア共和国の経済的・文化的な裕福さを彷彿とさせるものがあります。

ヴェネツィアの名産品の一つ、レース製品を売るお店もありましたが、サン・マルコやリアルト周辺よりも種類も豊富でお値段もお手軽でした。いい感じのリストランテもちらほらあって、落ち着いた雰囲気です。

でも水浸しの教会の地下を見て、年々地盤沈下が進んでいるというヴェネツィア全体の今後の運命にも思いを馳せずにはいられませんでした。