ネオニアーノ(正統派)洗礼堂 Battistero Neoniano


18世紀に再建された新しいドゥオモのすぐそばに、8角形プランの小さな古い洗礼堂があります。
5世紀末に内部をモザイクで装飾させたネオーネ司教にちなんでネオニアーノ洗礼堂、または、この50年後に建てられたアリウス派の洗礼堂と区別するために正統派(オルトドッシ)洗礼堂と呼ばれています。

ここもユネスコの世界遺産に指定されたモニュメントのうちの1つです。

 

クーポラ内部のモザイクは、アリウス派洗礼堂と同じく、中央には洗礼者ヨハネによりヨルダン川で洗礼を受けるキリストのシーンが描かれています。すぐ下の部分には12使徒が描かれています。
   

キリストはヨルダン川に体を浸しています(IORDANNの表記が見えます)。キリストの頭上には聖霊を表す鳩がおり、右側には擬人化されたヨルダン川が異教の老人の姿となって、右手にキリストの体を拭くための布を、左手には葦を持っています。

ただし、洗礼者ヨハネがキリストに聖水を頭からかけている杯は、19世紀の修復時に創作されたものです。オリジナルではアリウス派洗礼堂のモザイクに見られるように、洗礼者ヨハネは単にキリストの頭に手をかざしているだけだったはずだと考えられています。(写真提供:稲穂さん)

 

   

ここでは見にくいのですが、12使徒たちのそれぞれの頭の横に名前が書かれています。ベールで覆われた手に殉教の象徴である冠を持っているのも、アリウス派洗礼堂と同じモチーフです。

帝国時代の勝利の行進を思い起こさせる12人の使徒たちの荘厳な行列は、2箇所から内向きに進み、聖ペテロと聖パウロが出会うようになっています。写真中央右側がペテロ、左側がパウロです。ここではキリストの栄光を祝って行進しているのです。
燭台の形をした背の高い植物が空間を仕切り、使徒たちの衣装も金と白が交互することによって、行列に躍動感あふれるリズムを与えています。(写真提供:稲穂さん)

   

使徒たちのモザイクのさらに外側には、象徴的な玉座や祭壇が描かれています。玉座はそれ自体が至高の象徴で、イエスの十字架・東方の三博士の礼拝の隠喩によって完全性が加わるのだそうです。
   

一番外側のモザイクのアップ。
大理石で仕切られた祭壇の中に、福音書と玉座が交互に描かれています。(写真提供:稲穂さん)
   
一番下の部分にはコリントとイタロ・ビザンチン様式の柱頭があります。その間のモザイクは、20世紀初めに作り直されたものですが、アラビア風のアカンサスの葉模様と旧約聖書の預言者たちが描かれています。