アリアーニ(アリウス派)洗礼堂 Battistero degli Ariani


ひっそりと静まり返ったラヴェンナの街の、さらに打ち捨てられたかのように人通りもほとんどない一角。

6世紀初頭に、アリウス派の東ゴート族のテオドリクス王によってアリウス派の教会が建てられました。
王の死後すぐにカトリックに奉献され、兵士であり殉教者である聖テオドーロに捧げられ、サント・スピリト教会と名づけられました。

この日は教会内には入れませんでしたが、16世紀に正面入り口にルネッサンス様式の柱廊が取り付けられるなど、内部もオリジナルな部分はほとんど残っていないそうです。

 
教会の南側に隣接して古い壁があります。後期ビザンチン様式のドログドーネ(またはドロエドーネ)の家と言われています。(写真提供:稲穂さん)

 

   

サント・スピリト教会のすぐそばに、教会附属のアリアーニ洗礼堂があります。8角形プランのとても小さな洗礼堂も、教会本堂と同様、5世紀末から6世紀初めにテオドリクス王によって建てられたものです。
 
 

   

昼間から人通りもなく静まり返っている本当に小さな礼拝堂ですが、ユネスコの世界遺産の一部に指定されているのは、このクーポラ内部のモザイクがあるからです。
モザイクは、ネオニアーノ(正統派)洗礼堂からテーマを取っています。つまり、アリウス派教会と正統派カトリック教会は、当初は対立していなかったということを示しています。

中央に洗礼者ヨハネからヨルダン川で洗礼を受けるキリスト、下部には使徒たちの行列がキリストの優位性を表す十字架を載せた玉座に向かっています。
使徒たちを分けているのは、殉教者を象徴する実がなったナツメヤシの木。使徒たちは、ベールに被われた手に殉教と栄光の冠を持っています。
玉座の右にいる聖ペテロは天国の鍵を、左の聖パウロは巻物を持っています。

 

モザイク中央部のアップ。キリストが洗礼者ヨハネから洗礼を受け、聖霊である鳩がくちばしから聖水を吹いて聖霊を発散させています。キリストはヨルダン川に半分つかっています。キリストの左にいる老人はヨルダン川の象徴で、水の流れ出る皮袋を持ち、頭にカニのハサミをつけていますが、これは海と川の神性を意味しています。(写真提供:稲穂さん)